【役員インタビューvol.19】サンリーグループのダイバーシティ経営とは?社長直撃取材
女性たちがイキイキ働き、外国籍社員も複数在籍!属性に関係なく輝ける職場はどうやって生まれたのでしょう?多様なメンバーをまとめて率いる社長に、経営の秘訣を聞いてきました!
(プロフィール)
小林 和晃(Kobayashi Kazuaki)
サンリー・ホールディングス代表取締役社長/採用責任者。高校卒業後、大工としてキャリアをスタート。創業者である会長と共にサンリーグループを牽引。
既存の型と、自分の持ち味。新結合から革新へ!
――今日はダイバーシティ経営についてインタビューをさせていただきます。そもそもサンリーグループは「バックグラウンドの多様な社員を集めよう!」という意識で採用を進めていたのか、それとも普通に採用した結果、たまたま多様になっていったのでしょうか。
小林社長:どちらかといえば後者ですね。当社の理念に共感し、体現している人かどうかを最も重要な基準にして採用を進めた結果、自然と性別も国籍も多様になったという順序です。そもそも人間は誰一人同じではないので、どう採用しても「多様」だとは思うんですけどね。
――先日も英語が話せる社員さんにインタビューしましたが、対応可能言語が増えているのも最近の変化ですよね。
小林社長:そうですね、扱える言語が増えることで、より多くのお客様が喜んでいただけるのでしたらこれほど嬉しいことはありません。そういえば先日、私が給湯室に行こうとしたら、店舗の外で社員の誰かが英語で電話しているのが聞こえたんですね。「あれ、秋山かな?」と思ったら違って、英語を喋れることをまったく知らなかった社員だったんです。それで、「え、喋れたの!?」って言ったら、「あぁっ、聞いておられたんですか!?」って(笑)。
―ー偶然にも、隠れた能力を発見してしまったわけですね(笑)。
小林社長:そうなんです。「もっと早く言ってよ!」って、即刻英語対応可能メンバーに入れました。
――能力を発見して、伸ばす。社長としての重要な仕事ですね。
小林社長:もちろん、語学力自体が重要なのではなく、もともと当社の中にある仕事の型を習得してこそそういった能力が活きるんですよ。売買営業なら売買営業としての仕事の型、賃貸営業なら賃貸営業としての型。そういった既存の型と、個々人が持ち寄る新しいスキルが新結合して、初めて革新が起きる。そこに向かって挑戦していく中で、結果を出し、「やっぱり間違ってなかったんだ」という確信につながる。そういう循環が大切だと思っています。
行動指針を軸にして、日常的に思いをシェア。
――どんどん社員数が増えて、しかもバックグラウンドも多様でとなると、グループとしてまとめていく大変さもあるのではないかと思います。理念が軸になるのは間違いないと思いますが、どのようにその浸透を図っていますか?
小林社長:まず、「トリプルウィン」をはじめとする当社のフィロソフィーや行動指針を小さなリーフレットにまとめていて、それを全員が持って、行動する際の判断基準にしてもらっています。迷ったらそれを見るような、羅針盤的位置付けですね。さらに毎日の業務開始前にはフィロソフィーの読み上げをおこなっています。加えて二週間に1、2回、各課の朝礼を実施して、そこで毎回一人ずつ行動指針8か条に沿って自分の経験をシェアします。
――自分の経験というのは、業務中にあったことでもプライベートでもいいんですか?
小林社長:はい、どちらでも構いません。たとえば「凡事徹底」という行動指針に関して、直近でこういうことがあって、こう感じました、という感じです。そして聞いていたメンバー一人一人が今度はそれに対して感想をシェアする。
――「こういう凡事徹底もあったか!」みたいにみんなが感じられるんですね。
小林社長:はい。一番重要なのは、価値観の共有ですね。あくまでも行動指針のいずれかに沿った話をするという制限はありますが、自分の身に起きたことや考えたことを自由にシェアすることで、みんなの脳がネットワークでつながったようなイメージになるんです。つながると、アクセスできる。「あの人今こういうことで困っているんだな、じゃあこういうサポートができるな」というアクションも起こしやすいですよね。まるで自分のことのように。
――なるほど、チームワークの基盤に、そういう価値観や情緒の共有があるわけですね。ちなみにそうした「理念の理解」は人事評価にも関係しているのでしょうか?
小林社長:しています。理解度テストまではしていませんが、日々の行動を見ていれば、そこに表れるのでわかります。もちろん私だけが心の中に評価基準を持っていて一方的に評価するのでは社員はたまったもんじゃないので、「サンリーグループの一員として何が大事なのか」、誰が見ても一目でわかるように大項目・中項目・小項目に分けて示しています。小項目は本当に具体的に書いていて、たとえば凡事徹底については「机の上がいつも整頓されているか」のように示しています。
――わかりやすいですね。社員としても、そういうふうに基準を細かく示してもらえた方がクリアになっていいですね。
小林社長:ただ、より踏み込んだ話をするなら、報酬というのは「精神的報酬」と「経済的報酬」の二つがあると思っているんですね。会社に評価されるからやろう、これをやれば昇格できるからという「経済的報酬」ばかりだと、利己的な人ばかり生んでしまう。私は「自分が頑張った結果、相手が喜んでくれてよかったな」という「精神的報酬」が6、7割というのがベストバランスではないかなと思っています。多様な人がいつも、基本的には「相手に喜んでもらえるからやろう」と考える人が集まる、そういう組織体にしたいです。
理念を見つめ、己を見つめ、爆発的成長へ!
――ダイバーシティ経営やフィロソフィーの浸透、あるいは個人の能力を引き出すことに関して、これからもっと力を入れていく取り組みは何かありますか?
小林社長:地域活動や清掃活動には会社全体でもっと力を入れていきたいと思っています。また、すでに始めてはいますが、決起会を年に4回実施する予定です。
――決起会とはどんなことをするのですか?
小林社長:4月の第1回では半日かけて当社の成り立ちやフィロソフィーを伝え、7月に実施した第2回では自分自身を見つめ直してもらいました。そして10月の第3回は、2日かけて「自分の現在地を導き出す」、つまり自分の深掘りにしっかり取り組んでもらう予定です。フィロソフィーについて考えるには、まず自分について深く考え、自分を知ることが必要だからです。
――すごく真剣で濃密な2日間になりそうですね。
小林社長:今から楽しみですよ。2日間が終わったら、それぞれにレポートを書いてもらおうと思っています。何を考えたか、感じたか、学べたか。インプットしたものをそうやってアウトプットすることで初めて何かが身に付くのだと思いますし、そこから次の1年で爆発的に伸びてほしい。ちなみに入社直後にもスタートダッシュプロジェクトとして私の方から書籍を一冊渡して読んでもらい、読んだ上で本人なりに当社で何をしたいかを考えて決起会で発表してもらうことにしています。
――おお、いいですね!決意表明、所信表明、アツい。
小林社長:毎回の決起会を映像に撮っておくのもいいだろうなと思います。3年後、5年後に見返したときに、「自分あんな感じだったんだ。今の自分はこういうところで成長したなぁ」と思えるでしょうし、後輩が見て「あ〜先輩だ、若いなぁ。っていうか今の私とおんなじこと悩んでるじゃん……」って思うこともあるかもしれない。何年も撮り溜めたものをダイジェストにして映画館を貸し切って上映なんてしたら楽しそうですね。
――笑いあり、涙ありの上映会になりそうですね。
小林社長:8年いる社員が、「ここ最近の当社の取り組みのスピードはすごく早い」って驚いているんです。特に理念浸透の施策に関して。裏を返せば、伝えれば伝わる、そして実践まで持っていけるメンバーがやっと揃ってきたということでもあるんです。
――胸が熱くなってきました。会長と社長が山あり谷ありを乗り越えて、今やっと会社全体として社員の個々の力が満ち満ちている。
小林社長:成長する、キャリアアップするというのは、経営者に近づくということでもあるんです。会長や私の視点を取り入れ、どんどんこっちまで上がってきてほしいですね。
――そこに性別や属性はもはや関係なく、いかに深く理念に基づいた行動を取れるかですね。今日はありがとうございました!
VISION