「おすすめ書籍」後編、お待たせしました。今回は人間をよりよく理解するのに役立つ本や、教養を深める本など六冊をご紹介。忙しい日常を少し離れ、じっくりと向き合いたくなる書籍の数々をぜひご覧ください。

視点を広げて人生を豊かに。「人間」を理解する良書たち。

まずは、読書を通じて「人間」や「社会」への視点を広げるのにぴったりな二冊をご紹介します。

一冊目はこちら。

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(ブレイディみかこ・2019)

(推薦コメント)
「多様性について考え方が広がる本です。」

著者は十代の頃からパンクミュージックに傾倒し、渡英を繰り返した後に移住したブレイディみかこさん。この本は彼女の息子さんが「元底辺中学」に入学し、友人たちとの中学校生活の最初の一年半を描いたエッセイです。

貧困と人種差別が剥き出しの状態で存在する英国の学校の中で、綺麗事抜きの「多様性」にぶち当たっていく息子さん。そしてトラブルが起きるたびに息子と一緒に悩み、考えるみかこさん親子の姿は多くの読者に勇気を与え、この本は数々の賞にも輝きました。

自分が親だったら、こんなにも適切に・丁寧に言葉をかけながら子供を見守り、一緒に問題に向き合うことができただろうか?それにそもそも、明らかにトラブルが多そうな「元底辺中学」に我が子を入学させ、体当たりで成長させる勇気があるだろうか?……など、親側の視点からも考えさせられます。

単に言葉尻を整え、「差別的な表現をしない」だけでは決して解決しない「共生」の課題。その奥にある本質的な意味について、ミクロ・マクロの両面から思考を深めさせてくれる一冊です。

お次は、誰でも悩む「人間関係」をユニークな視点で考察する本。

「天才を殺す凡人」(北野唯我・2011)

(推薦コメント)
「自分を知るきっかけにもなるし、職場での人間関係の付き合い方などコミュニケーション能力を高めることのできる本です!是非読んでみてほしいですし、一緒に内容共有したいです!」

なんとなく職場で馴染んでいない気がする、周囲との人間関係に違和感がある、そもそも社会に出たばかりで「いろんな人と協働する」ことにまだ慣れていない……そんな人にぴったりの一冊。

これを読めば、世の中にいる様々なタイプの人がどのように活かし合えば組織がうまく回っていくのかイメージできるようになり、自分の中の才能をどう伸ばせば良いのかもなんとなく分かるようになります。

簡単なチャートがついているので、まずは自分がどれに当てはまるかをチェックして読み進めると良いかもしれません!

また、本書のもう一つのテーマは「組織の進化」

成果を出し続ける組織は、創造性(天才)、再現性(秀才)、共感性(凡人)の三つがうまく掛け合わさっているもの。しかしそれがうまくいっていないケースが散見されるのは何故か?そんな問いにも著者は自説で答えていきます。

経営のヒントにもなりそうです!

現実の諸問題からちょっと離れ……教養を深める二冊。

では次に、「実生活にすぐに役立つ」本とは対極にある、じっくり教養を深められそうな本をご紹介します。

一冊目は今回のアンケートで一番古い作品だったこちら。

「陰翳礼讃」(谷崎潤一郎・1939)

(推薦コメント)
「日本人特有の感性が知れます」

読み方は、「いんえいらいさん」。日本人の中にある「陰影(=かげ)」を愛でる感性を巧みに掬い取り、見事な文体で書き表す、文豪ここに極まれりといった一冊。

一部抜粋してみましょう。

「もし日本座敷を一つの墨絵に喩えるなら、障子は墨色の最も淡い部分であり、床の間は最も濃い部分である。私は、数寄を凝らした日本座敷の床の間を見る毎に、いかに日本人が陰翳の秘密を理解し、光りと蔭との使い分けに巧妙であるかに感嘆する。なぜなら、そこにはこれと云う特別なしつらえがあるのではない。要するにたゞ清楚な木材と清楚な壁とを以て一つの凹んだ空間を仕切り、そこへ引き入れられた光線が凹みの此処彼処へ朦朧たる隈くまを生むようにする。」

「思うに西洋人の云う「東洋の神秘」とは、かくの如き暗がりが持つ無気味な静かさを指すのであろう。われらといえども少年の頃は、日の目の届かぬ茶の間や書院の床の間の奥を視つめると、云い知れぬ怖れと寒けを覚えたものである。しかもその神秘の鍵は何処にあるのか。種明かしをすれば、畢竟それは陰翳の魔法であって、もし隅々に作られている蔭を追い除けてしまったら、忽焉としてその床の間はたゞの空白に帰するのである。」

いかがでしょうか。谷崎が幼い日に感じた陰影の魔法、光と影が織りなす巧妙な美や神秘性、怖れには、肌感で「なんとなくわかる」と思う人も多いのではないでしょうか。

古来、日本人が簡素な木材や仕切りを使い、建築の中に表現した「陰翳」の世界。

その美意識を深く理解することが、どこかで「今の時代や暮らしに合う」住居だけでなく、「時代を超えて普遍的に日本人の感性にフィットする」住居を生み出していくことに繋がっていくのかもしれませんね。

次は理系要素満載!のこの一冊。

「元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち」(吉田たかよし・2012)

(推薦コメント)
「人間の成り立ちやそもそも人間自身も元素の集まりでこの世は全て元素をどう組み合わせるかでできている。目から鱗とはこの本のこと。みんなに読んでほしい。」

元素周期表、と聞くだけで「暗記が面倒くさかった」「これで化学が嫌いになった」と拒絶反応を起こす人も少なくなさそうですが、著者はそんな嫌われ者の元素周期表に詰まった魅力を様々な角度から解説してくれます。

そもそも、周期表は「スイヘーリーベー僕の船……」と左上から順に暗記していた人が大半かと思います。著者はまずそこから否定。元素周期表はタテに読み解くのが正解だそうで、実はタテ列ごとに性質が近似する、「グループ」として考えられると理解しやすいとのこと(学生時代に知りたかった!)。

それがわかると面白いことが次々と見えてきます。たとえば、生きていくのに不可欠なナトリウムとカリウムは、周期表の上下に隣接しています。「周期表の上下に隣接=性質がかなり似ているけど、大きさが少し違う」ということなのですが、実はそれこそが「人間が筋肉や神経を使って動く」ことを可能にしているカラクリそのものだったのです。

他にも宇宙の成り立ちやレアアースのことなど、読めば読むほど「世界はなんてうまくできているんだ!」と驚くこと間違いなし!少し理系要素が強くて難しく感じる部分もあるかもしれませんが、これから訪れる秋の夜長の読書としてチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

最後は「個人の趣味」から二冊の推薦図書。映画化されたあの原作も!

「純粋にこの本が好きだから紹介したい!」。サンリーホームの社員がそんな気持ちで挙げてくれた本で、この記事を終わりたいと思います。

「スラムダンク」(井上雅彦・1991)

言わずと知れた伝説のバスケ漫画。バスケ初心者の主人公が多大な努力で力をつけていき、一戦一戦を闘う姿、そして仲間たちとの人間関係。登場人物たちに感情移入し、飛び出す名言の数々に涙しながら一気に31巻まで読んでしまうこと間違いなしです。子供から大人まで、折に触れて読み返して元気をもらいたくなる、そんな作品です。

最後はこちらです!

「図書館戦争(シリーズ)」(有川浩・2006〜)

(推薦コメント)
「視点が面白い。物語の構成が面白い。自分の趣味です。」

榮倉奈々さんと岡田准一さんの主演で映画化されて一躍有名になりましたが、読書好きの界隈ではそれ以前から大変な話題になっていたシリーズです。

公序良俗を乱す表現を取り締まる「メディア良化法」が成立して30年後の世界で、行き過ぎた検閲から表現の自由を守る「図書隊」の一員として立ち上がった主人公の女の子のバトルと恋模様を描いています。(一度ハマると小説から別冊小説、漫画、アニメ、映画とどんどんのめり込む先が用意されています!笑)

バンバンと銃撃戦を繰り広げる「あり得ない設定」ではあるものの、その奥に横たわるのは「表現の自由とは何か?」という実に身近で切実なテーマです。

なお、作者の有川浩さんは「図書館戦争」シリーズでブレイク後も、「阪急電車」「旅猫リポート」など数々のヒット作を書かれています。読みやすい文体で、小学校高学年以上であれば理解できそうな内容も多いので、親子で共通の読書として会話のきっかけにしても良さそうですね。

以上、前編・後編を通して全14冊の本を紹介してまいりました。

ジャンルが多岐に及んでいて、どれから読み始めるか迷うほど!?
今回、後編でご紹介した本は特に、読んだからと言ってすぐに仕事や資格に役に立つ本ではないものも多かったかと思います。

しかし、人間や社会の成り立ち、あるいは文化や美について深く考えてみることは、内面の世界を広げ、その人の人間的魅力を養うことにつながります。

長い目で見てそれはあらゆる仕事や生活の中に変化を起こす土壌になっていきますので、ちょっとでも興味のある本はぜひ読んでみてくださいね。

※調査概要
調査期間:2021年6月9日〜24日
調査対象:サンリーホームに在籍する社員14人
調査方法:アンケート用紙を配布・自由記述